このドメーヌの設立は1840年と古く、現在の当主は三代目のレジ・フォレ氏です。ドメーヌの所在地はヴォーヌ・ロマネ村の中心部で、DRCのすぐ隣ですが、ドメーヌが所有する畑面積は4.5haという小規模ドメーヌで生産本数も少ないため、日本での知名度はあまり高くはありませんが、コント・リジェ・ベレールのモノポール「特級ロマネ」がドメーヌ元詰めを開始するまでは、レジ・フォレに畑の耕作や醸造を委託していたという凄腕の造り手で、小さいながらもまさに知る人ぞ知るヴォーヌ・ロマネの優良ドメーヌなのです。
このドメーヌが所有する畑は素晴らしく、フラッグシップであるヴォーヌ・ロマネ一級レ・ゴーディショを始め、二枚看板の特級畑クロ・ド・ヴージョとエシェゾー、更に一級ではリシュブールの北に隣接するプティ・モン、そしてニュイ・サン・ジョルジュの最も優れた区画レ・サン・ジョルジュという豪華ラインナップを誇ります。加えてフォレの魅力は平均樹齢50年の葡萄の古木にあり、畑ではリュット・レゾネ(減農薬栽培)を取り入れ、自然派のワインで優しい味わいが特長と言われます。
こちらの特級エシェゾーはドメーヌの看板ワインの一つですが、エシェゾーに持つ畑面積は僅か0.38haに過ぎません。ご承知の通り、エシェゾーもクロ・ド・ヴージョと同様に所有者が多く、所有者が約50名、面積が37.69haという大きな畑であり、これが均質でないことは明らかです。
エシェゾーには、11の小区画(リュー・ディ)がありますが、ドメーヌ・フォレ・ペール・エ・フィスの所有する小区画は特級畑グラン・ゼシェゾーと接するレ・トゥルー(Les Treux)に0.15ha、ヴォーヌ・ロマネ一級のスショと接するクロ・サン・ドニ(Clos St-Denis)に0.15ha、そして最下部のレ・カルティエ・ド・ニュイ(Les Quartiers de Nuits)に0.08haと三ヶ所に分散・所在しています。
但し、レ・カルティエ・ド・ニュイの0.08haの僅かな畑は格下げしてACヴォーヌ・ロマネにしているため、特級エシェゾーは、残り二つの区画を合計した0.30haの畑から造っています。
一般的には、クロ・ド・ヴージョと同様に、エシェゾーも上部の区画が優れていると考えられていますが、実際にはそれほど単純ではなく、あの最高峰生産者のDRCやエマニュエル・ルジェ、ラマルシュも下部に位置するクロ・サン・ドニの小区画を持っていますので、最終的には、やはり畑の耕作と葡萄の栽培・剪定、収量・選果そして醸造技術の腕前が品質を左右すると思われます。
フォレは、畑仕事でワインの品質が決まると考えており、リュット・レゾネ(減農薬栽培)を採用、手をかけて葡萄を栽培し、収穫も全て手摘みで行っています。
また、フォレは、ここ数年で新樽の比率を軽減している造り手の一人で、ダブル・バリックという500リットルの大きな新樽を採用することでワインがオークと接触する比率を下げ、果実味の鮮度を強くしようとしており、ピノワール本来のエレガントで生き生きしたワイン造りを信条としています。
この結果、多数の生産者が存在するエシェゾーの中で、ドメーヌ・フォレ・ペール・エ・フィスの造るエシェゾーは1/3が平均樹齢70年という古樹の葡萄を使い高い品質を持つと同時に、コストパフォーマンスの良さで定評があります。残念ながら、生産量は平均1200本程度の少なさなので、日本ではあまり目にすることはありません。
近年ブルゴーニュワインの価格が急騰する中、この稀少なエシェゾーを含めて比較的リーズナブルな価格を提供しているドメーヌ・フォレ・ペール・エ・フィスのような優良生産者をご紹介することは私共ワイン屋の楽しみでもあり、皆様に是非お薦めし、お試しいただきたいワインです。
最新ヴィンテージとなる、2019年のヴィンテージ評価は、各種ヴィンテージ・レポートによれば、『2019年は4月の気温低下による霜害、初夏の天候不順に伴う花ぶるいや結実不良、更に、夏の酷暑と水不足により、収量は2018年より25%〜35%減少するものの、陽射しに恵まれて、収穫された葡萄の熟度は高く、酸も豊かであることから品質は極めて良好で、年号末尾に「9」の付く年は優良年というジンクスは守られる』とのことです。しかし、『2019年産のワインの品質は優れているものの、生産量が減少していることから、価格は2018年より高めとなる』旨も報告されています。