シャトー&ドメーヌ紹介
≪第一回 シャトー・ラトゥール Château Latour≫
【シャトー・データ】
アペラシオン(AOC) | ポイヤック |
格付け | メドック第一級 |
平均平均生産量 | 22万本 |
所有する畑面積 | 78ha(内、47haがランクロ) |
主要栽培品種 | カベルネ・ソーヴィニョン75%、メルロー20%、カベルネ・フラン4% |
オーナー | フランソワ・ピノー |
【シャトーの歴史・変遷・現状】
≪シャトーの由来と始まり≫
1855年のパリ万博の際に行われた格付けで、わずか4つしかない一級シャトーに選ばれたのが、塔のエチケットで有名なシャトー・ラトゥールです。
英仏の百年戦争(1337年〜1453年)当時まで、このシャトー周辺はイギリスの攻撃からフランスを守る重要な塔でした。「塔(ラトゥール)」という名前はこれに由来します。
余談ですが当時この塔を守っていたのがイギリスのタルボー将軍で、今も格付け四級のシャトー・タルボーとして名を残しています。1620年代に再建された丸い塔(サン・ランベールの塔)は、実際は鳩小屋だったようですが、現在でもワイン農園の偉大なシンボルとなっています。
≪所有者の変遷≫
17世紀の終わりまで、シャトー・ラトゥールはミュレ家によって代々所有されてきましたが、相続・婚姻等で、アレクサンドル・セギュール侯爵のものとなり、シャトー・ラトゥールの偉大なワインの歴史は、このセギュール家の所有と共に始まります。
アレクサンドル・セギュール侯爵は1716年にシャトー・ラフィットを購入します。彼の死後、息子でボルドー議会議長のニコラ・アレクサンドル(後にルイ15世から葡萄の王子と呼ばれる)侯爵は、1718年シャトー・ラフィット、シャトー・カロン・セギュールをも取得し、ワイン事業を拡大しました。
18世紀前半、イギリスでは貴族階級および裕福なブルジョワ階級の人々が、ボルドーワインを大量に消費していましたが、18世紀後半になるとフランス宮廷や貴族階級もワボルドーの高級ワインを愛飲したことから、シャトー・ラトゥールを始めとするボルドー最良のワインは黄金期を迎え、葡萄畑を拡大していきます。
シャトー・ラトゥールの敷地は、この好況にともない、1759年には38ヘクタール、1794年には47ヘクタールと広がっていきますが、フランス革命により、セギュール家は没落し、1842年にシャトーの運営形態は法人組織に移行しました。
1962年までこの法人組織はセギュール家の子孫によってのみ構成されていましたが、1963年にイギリス資本の会社が53%の大株主となり、1989年にはイギリス資本のアライド・ライオンズ・グループが株式の93%を所有することになります。
1993年6月、フランスの著名な実業家フランソワ・ピノー氏がアルテミス社を通してアライド・ライオンズ・グループの持ち株を買収しました。これにより、30年にわたるイギリス資本による経営を終えたシャトー・ラトゥールは、再びフラ ンス資本となり現在に至ります。
≪ジロンド河の恩恵と優れた醸造施設≫
このシャトーが最も評価されている点は、ヴィンテージによって左右されることがほとんどなく、五大シャトーの中で最も安定して、その名声に恥じないワインを造り続けていることです。
この理由の一つが、地理的にジロンド河に近いという地形の恩恵によるものです。川の輻射熱は、葡萄の成熟を早めたり、冬の畑を暖かくしたりしてくれるため、霜の被害、収穫時の秋雨被害を被るリスクを減らすことが出来るのです。安定したワインが造れるように、自然から加護を受けていると言っても良いかもしれません。
もう一つの理由は、シャトーの近代化と努力です。ラトゥールは外国資本により経営されていた1963年からの30年間に、いち早くステンレスタンクを導入するなど設備を一新させました。
更に2000年には巨額の資金を投じて、最新の醸造施設及び貯蔵施設を備えました。それに加えて、100%の新樽熟成、樹齢10年以上の木からしか葡萄を収穫しないなどの厳しい規律を作り、この姿勢は今なお変わることなく守り続けられています。
≪長熟型の偉大なグラン・ヴァン ”ラトゥール”≫
全ボルドーの頂点に君臨する5つの第一級格付けシャトー。その中でも非常に力強く、タンニンが豊か、そして濃厚で、他の追随を許さないほどの長命なポテンシャルを誇るのがグラン・ヴァンの「シャトー・ラトゥール」で、通常は年に18,000ケースが生産されます。
「50年以上の熟成にも耐えられる」とも言われる晩熟なワインだけに、若いうちはとても固くてガチガチとした印象があります。しかし、じっくり20〜30年と寝かせると、タンニンがやわらぎ、力強さと豊かなコク、円熟した深みが見事に現れ、世界に名高いラトゥールらしい極上の味わいを見せてくれるようになります。
農園には広さ78ヘクタールの葡萄畑がありますが、そのうちシャトー周辺部分47ヘクタールが「ランクロ」と名付けられ、ここで「偉大なワイン」専用の葡萄が育てられています。
≪他の格付けワインを凌駕するセカンドワイン”レ・フォール・ド・ラトゥール”≫
セカンド・ワインのレ・フォール・ド・ラトゥールの名前は、歴史的価値の高い区画「ランクロ」に由来し、品質改善の努力を積み重ね続けた結果、現在ではセカンドラベルでありながら、メドック地区の他の格付けワインに匹敵するほどの高い評価を得ています。
年間11,000ケースが造られるレ・フォール・ド・ラトゥールに使用される葡萄は、ランクロの外に位置する平均樹齢40年の区画、また、全区画から樹齢が低い葡萄、そして途中まではグラン・ヴァンとして造られていたものの、最後のセレクションで格下げされたタンク、これら3つのブレンドで構成されています。
新樽比率が50%程度になっていることや、よりメルローの比率が高いことなどがグラン・ヴァンとの違いとしてあげられますが、畑での仕事や醸造工程おいてはまったく同じ工程で行われるので、単なるセカンドワインの枠を超えた素晴らしい品質を誇っており、市場での価格も評価もメドックの他の格付けワインを上回るほどです。