【ジュヴレ・シャンベルタン概要】

 九つのグラン・クリュを擁するブルゴーニュ・ワインの王様の地、それがジュヴレ・シャンベルタン村です。ジュヴレ・シャンベルタン村は、コート・ドールの中でグラン・クリュを擁する村としては最北端にあり、ディジョンを起点に葡萄畑を縦走するグラン・クリュ街道(県道122号線)を南下するとこの村で最初にグラン・クリュに遭遇します。

 九つのグラン・クリュ以外にも、村北部のコート・ド・サン・ジャック地区には、クロ・サン・ジャックを始めとする銘醸一級畑群があり、まさにブルゴーニュ・ワインの王様にふさわしい陣容となっています。

 下の図は、ジュヴレ・シャンベルタンの特級・一級畑の葡萄畑の地図です。この地図は、当店店長が関係資料を基に、エクセルで描画したオリジナルですので、縮尺や形は正確ではありませんが、ジュヴレ・シャンベルタン村の葡萄畑の概要を把握する参考になると思います。

【ありそうで、ないシャンベルタンの区画図】

 皆様は、ジュヴレ・シャンベルタンの9つのグラン・クリュの中でも別格の特級畑シャンベルタンとシャンベルタン・クロ・ド・ベーズの畑の区画図をご覧になったことがありますか?ブルゴーニュワイン大全等には主要所有者の所有面積は掲載されているのですが、区画図とその所有者は、なかなか見つけることができませんでした。

 

 そこで、これまでに色々な資料を探し、それらを組み合わせて、ようやくシャンベルタンとシャンベルタン・クロ・ド・ベーズの所有者とその区画図を表した地図を作製しましたので、下に掲載します。この地図は当店店長がエクセルで描画したオリジナルで、縮尺は実寸とは異なりますが畑の主要な所有者と位置関係及び面積が把握できますので参考にして下さい。

 この地図を見るとこの別格の二つの特級畑をバランスよく所有しているのはルソー家だけですので、ジュヴレ・シャンベルタンにおけるアルマン・ルソーの偉大さがよく分かりますね。

ご承知の通り、アルマン・ルソーのシャンベルタンとシャンベルタン・クロ・ド・ベーズは高価かつ入手困難ですが、これ以外にも優れた区画を所有する面白い造り手がいますので、ご紹介します。

【1.ドメーヌ・ベルナール・デュガ・ピィ】

 

 ベルナール・デュガ・ピィの所有するシャンベルタン畑は面積0.05haの極小区画で、生産本数は200本足らずの上に、折半耕作契約により、ワインの1/3を土地所有者に納めることから、正規代理店のインポーターや著名評論家も試飲できないほどの稀少ワインで、ブルゴーニュワイン大全の著者ジャスパー・モリス氏もその著書の中で「私は樽からしか飲んだことはないが、信じがたいほど豪華なワインで、その風味一つ一つが極上で、思慮深さと威厳が両立を保っており、瓶熟成の頂点に達した際には恐るべきものとなるに違いない」と記しています。

 ベルナール・デュガ・ピィがこのシャンベルタンの区画をメタヤージュ契約により取得したのは1997年のこと。樹齢100年近い古樹の葡萄が植えられているこのシャンベルタンの区画は下の写真の通り、畑中央部斜面の最上部(赤線枠内)で、畝が南北(大多数の生産者の畝は東西)に造られ、馬で耕作しています。標高が高いとは言え、積雪はこの場所から溶けるそうですから、非常に陽当りの良いことがうかがえます。

 ブルゴーニュの標準のピエス樽は、1樽容量が225リットル(約300本)ですから、標準樽は大きすぎて使えず、樽メーカーのフランソワ・フレール社にその年の醸造量にピッタリのサイズの樽を特注しているそうです。

 当然日本への輸入も少なく、多い時でも1ケース(12本)とも言われる幻のシャンベルタンですから、入手は困難を極め、実物は勿論、写真でもご覧になったことがない方も多く、以前東京の某百貨店で販売した際は、徹夜組もでたという超レアワインの代表格です。

【2.ドメーヌ・ジャン・クロード・ベラン】

 サントネイで五代続くドメーヌでルイ・ラトゥール家との婚姻により、1987年にシャンベルタンの区画0.41haを手に入れ、話題となりました。しかし、何故か2009年にドメーヌを閉め、その畑を区画が近接していたアルマン・ルソーに売却します。その結果、2009年からアルマン・ルソーのシャンベルタンとなり、それ以前のヴィンテージのジャン・クロード・ベランのシャンベルタンは、ドメーヌは消失したものの、アルマン・ルソーと同じテロワールを持つ「幻のシャンベルタン」という珍品となっています。

【3.ドメーヌ・ルイ・レミー(現シャンタル・レミー)】

 ルイ・レミーとして知られていたドメーヌは、2009年から名称を変更し、現在はシャンタル・レミーとしてワインを造っています。区画図を見ると分かりますが、ルイ・レミーのシャンベルタンの畑はドメーヌ・ルロワの畑と隣あっています。ご存知の通り、ドメーヌ・ルロワのシャンベルタンはドメーヌではリシュブールと双璧のトップ・キュベであり、価格も30万円以上でしょう。このルロワとルイ・レミーの畑が隣接しているのは偶然ではありません。

 代々ブルゴーニュの大地主の名家であり、歴史ある生産者であったレミー家は、ジュヴレ・シャンベルタンとモレ・サン・ドニに二つのドメーヌを構え、モレ・サン・ドニはルイ・レミー、そしてジュヴレ・シャンベルタンは弟のフィリップ・レミーが相続していました。ところが、1989年にフィリップ・レミーはドメーヌ・ルロワに畑を売却した結果、兄のルイ・レミーの区画と隣り合うことになったのです。つまり、ドメーヌ・ルロワの区画は元々レミー家の畑の一部であったものですから、両者は同じテロワールを持った畑です。同時に、この区画は、アルマン・ルソーとも隣接する好立地にあります。

 

 ルイ・レミーの死後、ドメーヌは娘のシャンタル女史がドメーヌを引き継ぎ、80年超えの葡萄樹から造るシャンベルタンを始め、ラトリシエール・シャンベルタン、クロ・ド・ラ・ロッシュの錚々たるグラン・クリュを造っており、ワイナート43号で日本にも大きく紹介されました。

 参考までに、ルイ・レミーは1959年まで唯一の「シャンベルタン・ブラン」を造っていました。現在はその畑は売却し、新たな持ち主はピノ・ノワールに植え替えていますので、コート・ド・ニュイで白のグラン・クリュが造られるのはミュジニーだけになっています。

【4.ジャン・マリー・フーリエ】

 現在ブルゴーニュで人気のドメーヌ・フーリエの当主ジャン・マリー・フーリエが2013年ヴインテージから「買い葡萄」でシャンベルタン及びシャンベルタン・クロ・ド・ベーズを造り、個人名でリリースを開始しています。いわゆる「ネゴシアン物」になりますが、契約農家を厳選し、新たな挑戦を開始しています。

【5.ドメーヌ・ロベール・グロフィエ】

 ドメーヌ・ロベール・グロフィエは、しばしばシャンボール・ミュジニーまたはジュヴレ・シャンベルタンにあるものと思われています。というのも、所有畑の多くはシャンボール・ミュジニーやジュヴレ・シャンベルタンの村にあるためで、本拠地の所在するモレ・サン・ドニの村には特級・一級畑は全く持っていないという面白いドメーヌです。

 ロベール・グロフィエは銘醸畑シャンボール・ミュジニー一級レ・ザムルーズの最大所有者として有名ですが、ドメーヌのトップ・キュベは、特級シャンベルタン・クロ・ド・ベーズです。ロベール・グロフィエのシャンベルタン・クロ・ド・ベーズは、わずか0.42haという区画内の樹齢約40年の葡萄から造られる、年産1500本という大変稀少なワインです。

【6.ドメーヌ・ブリュノ・クレール】

 ドメーヌ・ブリュノ・クレールは、シャンベルタン・クロ・ド・ベーズの畑中央部に「畑上部から下部に至る東西に縦長の区画形状」の0.98haの区画を所有しており、植えられている葡萄は三分の二が1912年に、残りの三分の一が1973年に植えられた古樹となっています。

 この畑は元々祖父の造った偉大なドメーヌ、クレール・ダユが1960年代に取得したものですが、祖父の死後ブルゴーニュお決まりの相続問題で分割・売却されたため、現在のブリュノ・クレールの区画の両側にはルイ・ジャドとドメーヌ・バールの区画があります。

 これらは元々全てクレール・ダユの畑でしたが、相続の結果、次女の持ち分0.42haがルイ・ジャドに売られ、三女は嫁ぎ先のドメーヌ・バールに0.42haを持参し、長男(ブリュノ・クレールの父)の分0.98haがドメーヌ・ブリュノ・クレールに継承されたため、このような区画図となっているのです。かつてのドメーヌ・クレール・ダユの大きさが分かりますね。

 ドメーヌ・ブリュノ・クレールのトップ・キュベであるシャンベルタン・クロ・ド・ベーズは、2008年3月発行のワインの専門誌「ワイナート」43号(至高のブルゴーニュ特集)の中で、「磨かれた細部と緊密な構造を備える整然とした味わいの傑作」として絶賛・紹介されています。

【7.ローラン・ポンソ】

 

 ドメーヌ・ポンソの当主ローラン・ポンソ氏が2016年にドメーヌを離れ、息子のクレメンス氏と共に設立したのが”オート・クチュール”ネゴシアンのローラン・ポンソです。

 ドメーヌ・ポンソ時代は1982年にドメーヌ・デ・シェゾー(Domaine des Chezeaux)が所有する畑をメタヤージュ契約してシャンベルタンを造っていましたが、新生ローラン・ポンソもこのドメーヌ・ポンソ時代からの畑を引き継いでシャンベルタンを造っており、”樫の木”を意味する「シェーヌ」の愛称を付けています。従って、実質ドメーヌ物のシャンベルタンで、タンニンは収斂性が高く、力強く上質な酸が魅力の仕上がりで、まさにシャンベルタンの真髄を味わえる愛好家垂涎の一本です。

 この特級シャンベルタン キュベ・デュ・シェーヌ2017の生産本数は通常ボトルで僅か354本と大変稀少なキュベとなっています。 

【8.ドメーヌ・プリューレ・ロック】

 ルロワとDRCの遺伝子を継ぐドメーヌ・プリューレ・ロックはその所有する銘醸畑と共に、創設者フレデリック・ロック氏の「独自の感性でつかみとったビオディナミ栽培と自然な醸造法により優れた畑の力を生かすというワイン造りへのポリシー」により、1988年設立のまだ歴史の浅いドメーヌながら、一躍ブルゴーニュの最高峰生産者に躍り出ました。

 ドメーヌ・プリューレ・ロックが所有するクロ・ド・べーズの区画は、クロ・ド・べーズ中央部に位置する畑上部から下部に至る東西の縦長形状で、ジェラール・ラフェの小さな畝を挟んでアルマン・ルソーの区画とも隣接する面積1.01haの畑で、1994年に取得しています。

 「良いワインには果皮が厚くて果汁の少ない葡萄をつける古木が良い」との言葉通り、樹齢90年の古樹の葡萄から造られるこのワインは、神秘的なワインで、力強く、深みのある風味、堂々として落ち着いた風格は熟成後の大輪の開花を予感させ、ドメーヌの堂々たるトップキュベです。

 一般的には100リットルの葡萄果汁を得るのに必要な葡萄は120キロですが、プリューレ・ロックのシャンベルタン・クロ・ド・ベーズの90年の古樹では、同じ100リットルに対し175キロの葡萄を必要とする低収量のため、生産量は僅か3600本の稀少品となっています。

【ドメーヌ・アルマン・ルソーのシャンベルタンはこちらからどうぞ】
【ドメーヌ・アルマン・ルソーのシャンベルタン・クロ・ド・ベーズはこちらからどうぞ】
【ドメーヌ・ベルナール・デュガ・ピィのシャンベルタンはこちらからどうぞ】
【ドメーヌ・ジャン・クロード・ベランのシャンベルタンはこちらからどうぞ】
【ドメーヌ・ルイ・レミーのシャンベルタンはこちらからどうぞ】
【ドメーヌ・フーリエ(ジャン・マリー・フーリエ)のシャンベルタンはこちらからどうぞ】
【ドメーヌ・ロベール・グロフィエのシャンベルタン・クロ・ド・ベーズはこちらからどうぞ】
【ドメーヌ・ブリュノ・クレールのシャンベルタン・クロ・ド・ベーズはこちらからどうぞ】
【ローラン・ポンソのシャンベルタン キュベ・デュ・シェーヌはこちらからどうぞ】
【プリューレ・ロックのシャンベルタン・クロ・ド・べーズはこちらからどうぞ】

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