マルキ・ダンジルヴィーユはヴォルネイは勿論、ブルゴーニュの最高峰生産者として有名ですが、ドメーヌ創設者が1920年代の後半から1930年代の前半にかけて、ドメーヌ元詰めやアペラシオン制度推進の中心人物であり、またINAO(フランス原産地呼称統制協会)の創立メンバーだったりとフランスのワインに関する機関で活躍した名実ともにブルゴーニュの名士です。
ドメーヌ創立後約200年ですが、1507年から歴史に名が残るブルゴーニュきっての老舗名門ドメーヌです。ヴォルネイに特級畑がないのは、ダンジルヴィーユ侯爵がアペラシオン制度推進の中心人物であったため、身贔屓あるいは利権誘導を避けたためとも言われています。
特級に値する歴史ある銘醸畑クロ・デ・デュックをモノポールで所有しているだけに遠慮したのでしょうが、高潔な人格者であったようです。
その所有する畑の中で、一級クロ・デ・デュックは「大公のクロ」の名の通り公爵のためのワインが造られていた由緒ある2.15haの畑で、ダンジルヴィーユのモノポール(単独所有畑)のフラッグ・シップ・ワインです。
ヴォルネイの集落の北側の標高300m〜330m付近に位置し、南東を向く畑の斜面の勾配は急で小石交じりの土壌のため水はけも非常に良く、タンニンがしっかりとした肉付きの良い味わいになっています。
近年特級への昇格検討も噂されるクロ・デ・デュックは、日本へ輸入が少なく、今や幻の希少品となっており、ブルゴーニュ・ラヴァーが探し求めるワインです。
2011年のブルゴーニュは、暑い春により開花時期が早まり、夏に気温が上がらなかったため、2010年同様収穫量は例年より低めでした。果実の糖度は上がりすぎず、酸も穏やかな、柔らかく親しみやすいヴィンテージで、2009年、2010年のビックヴィンテージに及ばないまでも、結果としてエレガントで豊かな味わいの仕上がりに多くの評論家が驚きを示したヴィンテージです。
最高峰生産者はグレート・ヴィンテージ以外の年にも素晴らしいワインを造ります。クロ・デ・デユックがその真価を発揮するのは15年を要すると言われていますので、優良年であった2009年と2010年との違いは、飲み頃が少し早いことだと思います。しかし、却って早くから楽しめ、価格的にもお手頃というメリットもあり、可能ならば同じ造り手の、同じ畑のヴィンテージ違いを味わってみたいものです。