マルキ・ダンジルヴィーユはヴォルネイは勿論、ブルゴーニュの最高峰生産者として有名ですが、ドメーヌ創設者が1920年代の後半から1930年代の前半にかけて、ドメーヌ元詰めやアペラシオン制度推進の中心人物であり、またINAO(フランス原産地呼称統制協会)の創立メンバーだったりとフランスのワインに関する機関で活躍した名実ともにブルゴーニュの名士です。
ドメーヌ創立後約200年ですが、1507年から歴史に名が残るブルゴーニュきっての老舗名門ドメーヌです。ヴォルネイに特級畑がないのは、ダンジルヴィーユ侯爵がアペラシオン制度推進の中心人物であったため、身贔屓あるいは利権誘導を避けたためとも言われています。
特級に値する歴史ある銘醸畑クロ・デ・デュックをモノポールで所有しているだけに遠慮したのでしょうが、高潔な人格者であったようです。
マルキ・ダンジルヴィーユのモノポール(単独所有畑)クロ・デ・デュックと並ぶ看板ワインがヴォルネイの最高評価の畑、一級タイユ・ピエです。その土壌は、石灰質が強く、石灰岩と粒子の細かい粘土が微妙に混じり、タイユ・ピエの上品さとミネラル感を生み出しています。
畑名の由来は、タイユ(taille=切る・折る)、ピエ(Pieds=足)の意味の通り、「斜面が急なため足を折らなければならない」とか「とがった小石が多く、足を切る」とか諸説ありますが、いずれにせよヴォルネイで最も急傾斜で小石に覆われた痩せた土地で、ここから素晴らしいワインが産まれます。タイユ・ピエの面積は7.13haで、その内、マルキ・ダンジルヴィーユの所有する面積は1.7haです。
しかも今回のヴィンテージはグレート・ヴィンテージの2005年です。輸入後約10年間エノテカ那須エイジングワインセラーに保管されていましたので、実店舗やネット店舗を探してもこれほど良好なバック・ヴィンテージは、まず見つからないのではないでしょうか。
ヴォルネイの最高評価の一級赤ワインがその真価を発揮するのは15年を要すると言われていますので、ようやく飲み頃の入り口にかかった頃でしょうか。好環境の下で10年以上の熟成を重ねたタイユ・ピエ2005は、是非コレクションに加えていただきたい貴重な一本です。