ドメーヌ・リシャール・マニエールの名前を聞いて「あのエシェゾーか」と思われる方はかなりのブルゴーニュ通ですね。37.69haの面積から成る特級エシェゾーの11の小区画の中では、心臓部にある「元々のエシェゾー」であるエシェゾー・デュ・ドゥスュ3.55haとその隣にあるレ・プレレール5.21haが、最良の区画と評価されています。
特に、レ・プレレールは面積5.21haの内の、実に4.25haがDRCに占有されていることもこの高い評価の一因となっています。
ところが、レ・プレレールの中に、DRCに両方を挟まれている区画を所有しているドメーヌがあり、これがリシャール・マニャールです。
両側をDRCに挟まれていると言うより、むしろ「レ・プレレールのど真ん中に位置し、DRCの畑を分断しているエシェゾー」の所有者と言った方が正確です。
しかし、リシャール・マニエールはエシェゾー以外にも素晴らしい畑を所有しています。10haの所有畑は本拠地ヴォーヌ・ロマネを中心に、南はニュイ・サン・ジョルジュから北はフィサンまで広がっていますが、由緒ある造り手だけにそのラインナップは素晴らしく、グランクリュのエシェゾーをはじめ、ヴォーヌ・ロマネ屈指の一級畑レ・スショや、ニュイ・サン・ジョルジュを代表する一級オー・ブドやレ・ダモードを古樹の葡萄と共に先祖代々受け継いできています。
こちらの商品は、リシャール・マニエールの最新ヴィンテージ2021年のドメーヌ蔵出し正規品[ニュイ・サン・ジョルジュ一級レ・ダモード2021]です。
ニュイ・サン・ジョルジュの一級畑レ・ダモードは、ニュイ・サン・ジョルジュの中でも標高300mの高さに位置し、村では珍しく斜度が20度ほどもある急斜面の畑です。細かな砂利と石灰質土壌が堆積して表土を形成しており、ヴォーヌ・ロマネ村との村境に位置し、ヴォーヌ・ロマネの同名の村名畑レ・ダモードと隣接しており、村境にある標高の高い上部が村名畑(4.27ha)、下部が一級畑(8.55ha)となっています。
樹齢約40年、バリック18ヶ月(新樽60%)で造られるリシャール・マニエールのレ・ダモードは、ヴォーヌ・ロマネと隣り合うだけに、[レ・ダモード(ご婦人たち)]のクリマ名の通り、ニュイ・サン・ジョルジュの他の区画のワインとは一味違った、甘い果実の風味や繊細で優しいタンニンが特徴で、ヴォーヌ・ロマネを彷彿とさせるピュアなスタイルのエレガントな味わいです。
下にニュイ・サン・ジョルジュ北部地区の葡萄畑地図を掲載しておりますので、一級レ・ダモード(地図中の②)と村名格レ・ダモードの位置をご確認ください。
リシャール・マニエールが特級畑エシェゾーやヴォーヌロマネ一級レ・スショ、ニュイ・サン・ジョルジュ一級レ・ダモードを始めとする素晴らしい畑を所有しているのは偶然ではありませんし、また無名のぽっと出の造り手でもありません。ドメーヌ・リシャール・マニエールは1795年からヴォーヌ・ロマネ村の中心に居を構える歴史ある造り手で、現当主のリシャール・マニエールで5代目となります。
先代の頃はマニエール・ノワロ名義でワインを手掛けており、ロバート・パーカーからは、「熟成力のある凝縮したリッチなブルゴーニュを手掛ける」というコメントともに4ツ星評価を得ています。因みにノワロはリシャールの母方の家系で、この一族の醸造所や邸宅はヴォーヌ・ロマネ中心部のDRCとは筋向いの場所に集まっており、ヴォーヌ・ロマネ最大の土地の所有者の一人なのです。
そのような老舗ドメーヌが日本であまり知名度が高くないのは、これまでワインの大半をネゴシアンにバルク売りしており、ドメーヌの名を冠したワインが市場に出ることが絶対的に少なかったためです。しかし、そのクオリティに感銘を受けたブルゴーニュのワイン商が「絶対に元詰めをしてドメーヌの名前でワインを世に出すべきだ」と、リシャールを説得し、ようやく元詰め本数は増えたものの、その内9割がフランス国内で消費されてしまうため、国外で彼のワインに出会う機会は非常に稀であるため、日本では「知る人ぞ知るドメーヌ」にとどまっています。
黙々と畑仕事に取り組むリシャールの評価は「畑で生まれ、畑で死ぬ」という生粋のヴィニュロンとされ、リュット・レゾネでの栽培では、除草剤や殺虫剤は使用せず、同村の醸造家たちが「葡萄畑ではなく庭園だ」と評するほど、彼の畑は完璧に整っているとされます。