1757年にグリュオ神父により創設されたシャトー・グリュオ・ラローズは、1855年の格付けで二級を与えられましたが、既に1700年代後半には高い名声を得ていました。
エチケットに堂々と記された「Le Vin des Rois, Le Roi des Vins(王のワイン、ワインの王)」という言葉は、このワインがフランス宮廷でこよなく愛されてきた歴史を示しており、王冠はその当時の所有者サルジェ・ド・ラフォンテーヌ男爵の爵位を表しています。
シャトー・グリュオ・ラローズは、ポイヤックとマルゴーに挟まれたサン・ジュリアンの内陸部の「プラトー・デリット」と呼ばれる海抜28mの平坦な丘の上に82haもの広大な葡萄畑を所有し、第二級シャトーの中で最大級の生産量を誇り、年によって品質にムラがなく、安心して買えるというのも魅力です。
高台に位置しているため、土壌は主に粘土と石灰の上に厚く堆積した非常に水はけのよい砂利質の層からなり、粘土の含有量もサン・ジュリアンの他の畑よりも高く、これがグリュオ・ラローズの肉厚な力強さに寄与しており、サン・ジュリアンの美点を余すところなく表現しているシャトーと言われています。
シャトー・グリュオ・ラローズは20世紀に入り三度も所有者が変わりましたが、この間も素晴らしいワインを一貫して世に送り出しています。この理由は偉大なテロワールに加え、1970年から2006年まで醸造責任者を務めたジョルジュ・ポリ氏の卓越した手腕によるところが大きいと思われます。
また、これに加えて歴代のオーナーが巨額の資金を畑や設備に投下してきたことも挙げられます。例えば、光合成を促進させるために、葡萄樹を10センチ高くする“パリサージュ(葡萄樹の嵩上げ)”という手法や殺虫剤を一切使用していない“リュット・レゾネ(減農薬農法)”の実践、さらに葡萄畑に大きな被害を与える“雹を発生させない装置”の導入等です。
「メドックでポイヤックのワインが最も栄光に輝くものであり、マルゴーのワインが最も繊細で優美なものだとすれば、サン・ジュリアンのワインはその中間を行く」と評される通り、シャトー・グリュオ・ラローズは、ポイヤック的な堅牢で重厚なスタイルとマルゴー的な優雅さでフィネスのあるスタイルの二つが見事に調和し、熟練の技が生きた品格のあるワインを生み出しており、現在でも「最も愛されている第二級格付けのひとつ」です。
こちらのシャトー・グリュオ・ラローズ2006は10年以上にわたってエノテカ那須エイジングワインセラーの良好な環境下で熟成の時を経てきたものです。
2006年のセパージュは「カベルネ・ソーヴィニョン60%、メルロー24%、カベルネ・フラン11%、プティ・ベルド5%」でしたが、9月後半に長雨にたたられたヴィンテージで、著名なワイン評論家ロバート・パーカー氏はパーカーポイント84点と低い評価をしていますが、果たしてどうでしょうか。
グレート・ヴィンテージと呼ばれる優良年のワインは人気がありますが、所謂オフ・ヴィンテージのワインもまた、自然と人の織り成す産物ですから、これを味わうこともまたワインの楽しみでもあり、ワインを深く知ることになるのではないでしょうか。
一流生産者はヴィンテージに左右されないワイン造りに努めており、また、特に2006年ヴィンテージは1970年から三十数年間、醸造責任者として卓越した手腕をふるってきたジョルジュ・ポリ氏の最後のヴィンテージです。