世界で最も有名な畑ロマネ・コンティとラ・ターシュに挟まれた面積1.65haの稀有で話題性十分の畑「ラ・グランド・リュ(La Grande Rue=偉大な道)」を単独で所有しているのがこのドメーヌ・フランソワ・ラマルシュです。1936年、INAOがブルゴーニュの格付けを制定した時、このラ・グランド・リュは最良の立地条件を兼ね備えているにも関わらず一級に格付けされてしまいました。一旦格付けがされると、これを覆すことは並大抵のことではないことはボルドーのシャトー・ムートンの例を見ても良くお分かりいただけると思います。
その後、現在のドメーヌ名に冠されているフランソワ氏が1985年に父アンリ氏からドメーヌを引き継ぐと直ちにINAOにラ・グランド・リュの特級昇格を申請します。この申請を受けてINAOは、ラ・グランド・リュの畑の再査定を開始し、土壌分析、隣接する特級ワインとの比較試飲、近隣生産者との面談などを経て1992年、ついに念願の特級畑昇格を果たしたのです。原産地呼称が制定されて以降、ブルゴーニュにおいて一級から特級への昇格を果たしたのはモレ・サン・ドニのクロ・ド・ランブレイとこのラ・グランド・リュだけであり、抜群の立地もさることながらフランソワ・ラマルシュの品質向上への絶えまぬ努力が報われた結果と言えます。
以前から「よいワインではあるが、どこか粗削りな部分や物足りなさが感じられる」との評価であったドメーヌ・フランソワ・ラマルシュのワインですが、1985年にフランソワ氏がドメーヌを継いでからの品質向上は素晴らしく、更に2003年に醸造にフランソワの長女ニコルがつき、販売に姪のナタリーが加わり、大きく世代交代を果たしたことも奏功し、ヴォーヌ・ロマネのトップ生産者の地位についています。特にフラッグ・シップワインであるラ・グランド・リュは、もはや単なる立地の話題性にとどまらず、その最高のテロワールから、ラ・ターシュやロマネ・コンティと同格の、勇壮で荘厳なワインが生み出されることを期待されています。
2012年は春5月の低温、6月の雹害、その後うどんこ病やベト病の蔓延という、「生産者泣かせの年」でしたが、幸いなことに9月後半の良好な天候により、収量は減少したものの、残った葡萄は十分に成熟・凝縮して質が極めて高く、結果的に優良年と評価されているヴィンテージです。
近年、葡萄畑での作業がより丁寧になっただけでなく、樽の吟味も徹底し、2000年から新しい発酵タンクを導入したこともあって品質が更に安定、同時に葡萄畑の改革も進め、ビオロジック農法を実践し、2010年には所有する畑すべてがビオロジックで栽培されるようになっており、世代交代したラマルシュは、新世代のトップドメーヌの座を不動のものにすると高く評価されています。まさに名実共に偉大な道(グランド・リュ)を歩み始めた注目のドメーヌです。