サン・トーバン,アン・レミリー,クロ・ド・ラ・シャトニエール,デリエール・シェ・エドゥアール,マルク・コラン,ユベール・ラミー,オート・デンシテ

「知る人ぞ知る」シャルドネの聖地で、掘り出し物ワインの宝庫

【サン・トーバン　～Saint -Aubin～】

　サントーバンは白の銘醸地ピュリニー・モンラッシェとシャサーニュ・モンラッシェの二つの村の西に隣接しており、かつてはこの二つの名高い村の陰に隠れたようなアペラシオンでした。しかし近年、最高の白を産み出すモンラッシェの山の背後に控える白主体の産地で、「知る人ぞ知るシャルドネの聖地」として、その価値が認められています。

　白主体の産地ではありますが、1937年にAOC認定された赤ワインも、褐色粘土質の土壌で栽培されるピノ・ノワールから堅固で肉付きの良いシルキーかつオイリーなワインが造られ、長期熟成に耐える高品質なものとして知られています。

　サン・トーバンは、銘醸地と隣接しているだけあり、優れた自然条件を持っている割にはピュリニー・モンラッシェ、シャサーニュ・モンラッシェに比べて知名度が低いため、赤白共にコストパフォーマンスに優れたお買い得なワインを産するAOCで、「掘り出し物ワインの宝庫」と言われることもある注目の産地です。

　下に、ブルゴーニュワイン委員会作成のサン・トーバンの葡萄畑地図を掲載しておりますので、ご覧下さい。

　サン・トーバンには20の一級畑がありますが、これら一級畑は三つのエリアに分かれています。アペラシオン中で最良と言われるエリアは、国道6号線をシャサーニュ側から北上し、サン・トーバンに入ってすぐ右側にある南向き斜面で、ここにはアン・レミリー、レ・ミュルジェ・ダン・ド・シャン、シュル・ガメ、ラ・シャトニエール、レ・シャンプロ等の銘醸畑があり、ここが第一エリアです。

　この第一エリアの中にある一級畑アン・レミリーは、万人が認めるサン・トーバン最良の一級畑で、地勢的にはモンラッシェと同じ斜面の延長上にある南西向きの急斜面にある小石混じりの石灰質土壌の区画で、ピュリニー・モンラッシェに似た特徴を持っており、「プティ・モンラッシェ」とも呼ばれています。また、一級畑ラ・シャトニエールの中には、ユベール・ラミーの看板ワインで有名なクロ・ド・ラ・シャトニエールがあります。

　第二エリアは、谷を挟んで第一エリアの反対側に位置するシャサーニュ・モンラッシェ村に接する比較的小さなエリアで、ここにはシャルモワ、ピタンジュレ、レ・コンブ・オー・シュッド等の畑が連なっています。

　第三のエリアは、集落の上の斜面にある、大変日当たりの良い、南東向きの畑群で、「エドゥアール家の裏」を意味し、ユベール・ラミーの「オート・デンシテ（高密植栽培）」で有名なデリエール・シェ・エドゥアールやル・ヴィラージュと名付けられた一級畑の中にユベール・ラミーが所有するクロ・デュ・メ等の区画があります。

　サン・トーバンの造り手として、直ぐに名前が挙げられるのが、ドメーヌ・マルク・コランとドメーヌ・ユベール・ラミーで、「もしサントーバンのクリマの特徴を知りたければ、このドメーヌの一級畑を並べて試すとよい」と言われるほどの教科書的な存在です。

　ただ、マルク・コランはサン・トーバンと言うより世界最高峰の特級白ワイン「モンラッシェの16人の所有者の一人」として有名であり、またピュリニーやシャサーニュにも多くの畑を所有する大ドメーヌとなっていることから、現在サン・トーバンを代表する造り手としてはユベール・ラミーに軍配が上がるのではないでしょうか。

　ラミー家は、1640年から葡萄栽培に携わってきた歴史のある家系ですが、先代の当主ユベール氏が彼の父親ジャン・ラミー氏と共に、サン・トーバンにドメーヌ・ユベール・ラミーを設立したのは１973年のことです。

　ユベール・ラミーをここまで有名にしたのは、何と言っても「オート・デンシテ（Haute Densite＝高密植栽培）」です。ユベール・ラミーでは、通常の畑でも1haあたり10,000本～20,000本という高密植栽培ですが、サン・トーバンの一級畑デリエール・シェ・エドゥアールの上部区画では1haあたり30,000本という超高密植栽培を行っており、ここから採れる葡萄は通常のデリエール・シェ・エドゥアールとは別に醸造し、オート・デンシテの名前をつけてリリースしており、入手困難な稀少ワインとなっています。

「異次元の高密植栽培で、高品質の葡萄栽培を追求し、テロワールを見事に表現するワインの造り手」、それがドメーヌ・ユベール・ラミーで、ドメーヌを運営する現当主のオリヴィエ氏は、フランス内外でワイン造りやマーケティングを学び、メオ・カミュゼでも半年間働き、その時に顧問のアンリ・ジャイエ氏からもワイン造りを学んだ経験もあり、専門誌で「ブルゴーニュの未来の10年を支える10人」に選出されるなど、造り手としても注目を集めています。