エシェゾーの心臓部の小区画エシェゾー・デュ・ドゥスュに畑を持ち、

並外れたエシェゾーの造り手かつオート・コートの達人

【ドメーヌ・ジャイエ・ジル】

 〜Domaine Jayer-Gilles〜


 ドメーヌ・ジャイエ・ジルは、オート・コートのマニー・レ・ヴィレール村を本拠地とし、主にオート・コート・ド・ニュイとオート・コート・ド・ボーヌに畑を所有し、赤白とも素晴らしいワインを造る小規模ドメーヌでオート・コートの第一人者として高く評価されています。

 ジャイエの名前からわかるとおり、現当主ジル・ジャイエの父で先代のロベール・ジャイエはブルゴーニュの神様、アンリ・ジャイエと従兄弟同士の間柄です。ロベールはヴォーヌ・ロマネの出身で、DRC社で元醸造長アンドレ・ノブレにワイン造りを学んだ後、1948年にこのドメーヌを作りました。1955年にマニー・レ・ヴィレール村のジル家の娘と結婚し、オート・コートの畑を継承します。それにジャイエ家から相続したエシェゾーとニュイ・サン・ジョルジュ一級ダモードなどが加わり、現在は下の所有畑一覧表の通り約11haの面積の葡萄畑を所有しています。

 ジャイエ・ジルの特徴は、新樽率の高さで、1990年にドメーヌを引き継いだジル・ジャイエは父ロベールからの手法を守り、熟成を新樽100%で行うことを信条としています。新樽を100パーセント用いるのは特級畑、または評価の高い一級畑のワインに限定するのが一般的ですが、ジャイエ・ジルは大半の銘柄に新樽を使用し、エシェゾーはもちろんのこと、格付けに関係無く、オート・コート・ド・ニュイ、オート・コート・ド・ボーヌ、さらにはブルゴーニュ・アリゴテにまで全面的に新樽が使われています。

 勿論、新樽率100%で造られるワインは、それに耐えられるだけのしっかりとした構造を備えていなければなりません。全体を支える酸にタンニン、そして葡萄に十分な果実味があるからこそ、新樽での熟成が可能になります。新樽で熟成されたワインには力強さがあり、10年以上もの長期熟成が可能なワインへと仕上がるのです。

 ”オート・コートの達人”と呼ばれるように、オート・コートの畑が中心ですが、ジャイエ・ジルの看板ワインは何と言ってもグラン・クリュの「エシェゾー・デュ・ドゥスュ」です。ご承知のように、エシェゾーは11の小区画、総面積37.69haの玉石混淆とも言える広い特級畑です。

 この11の小区画の中で最も優れた小区画がエシェゾーの心臓部に位置する面積3.55haのエシェゾー・デュ・ドゥスュで、グラン・ゼシェゾーのすぐ上に位置します。原産地呼称制度が施行されるまでは、この小区画エシェゾー・デュ・ドゥスュからできたワインにしかエシェゾーの名前を使っていませんでした。参考までに、面積9.14haの特級畑グラン・ゼシェゾーについた「グラン=大きい」の文字は、19世紀始めにはエシェゾー・デュ・ドゥスュを中心としたエシェゾー・デュ・オー(斜面上部のエシェゾー)よりも大きかったことから名付けられており、品質が高いことを意味しているわけではありません。

 1925年にはこの小区画エシェゾー・デュ・ドゥスュの生産者は他の生産者を訴えますが敗訴し、それ以降現在の11区画全てがエシェゾーとして認められています。とは言え、11区画の総面積37.69haのエシェゾーの中で、この小区画が「真のエシェゾー」であることに疑う余地はなく、ここに葡萄樹を植えている幸運な主な生産者は、ロベール・アルヌー、ジャイエ・ジル、モンジャール・ミュニレ、ドメーヌ・デ・ペルドリなど少数の造り手のみです。

 ドメーヌ・ジャイエ・ジルは、このエシェゾー・デュ・ドゥスュのみに0.54haの畑を所有しており、植樹されている葡萄の樹齢は60年に達する古樹です。その味わいは、ただ濃厚でパワフルなだけでなく、グラン・クリュならではの風格を備えたエレガンスさを備えており、名著「ブルゴーニュワインがわかる」のマット・クレイマー氏は、「他の生産者から頭一つ抜けていて、クリマの指標たりえる並外れたエシェゾー」と絶賛しています。加えて、0.54hの畑から造られる僅か2000本ほどのこの稀少なワインは、トップ生産者の造るエシェゾーの中でも、比較的お値打ち的な価格で手に入るため、非常に入手困難な銘柄として常に人気を集めているのです。

 このエシェゾー以外にも、コルゴロワン村の葡萄から造る[コート・ド・ニュイ・ヴィラージュ][オート・コート・ド・ニュイ]の100%新樽で熟成された赤ワインも秀逸で、大変コストパフォーマンスの高い人気ワインです。もう一つ面白いワインが、オート・コートで造る白ワインです。このシャルドネとピノ・ブラン(ピノ・ノワールの突然変異種で、通称ピノ・グージョ)のアッサンブラージュにより、新樽50%で造られる[ブルゴーニュ オート・コート・ド・ニュイ ブラン]は、高い標高がもたらす酸味とミネラルのエレガンスさで、コート・ド・ボーヌの銘醸白ワインと見紛うばかりと高く評価されており、正に”オート・コートの達人”と称えられる所以です。

しかし、最後に悲しいお知らせをしなければなりません。

 2018年1月27日に、ドメーヌの現当主ジル・ジャイエ氏が57歳で病死との訃報が入ってきました。タイミング的には霜害で苦労した2016年を仕込み、リリースした後ぐらいになるのでしょうか。これにより、畑仕事から醸造・熟成までジル・ジャイエ氏の手掛けたワインは2016年ヴィンテージが最後となりました。

 今になってみれば分かることですが、2017年8月12日にドメーヌ・ジャイエ・ジルは、スイスの実業家で、世界的な製薬企業のエフ・ホフマン・ラ・ロシュ副会長で、世界自然保護基金の副会長も務めるアンドレ・ホフマン氏により買収されています。

 ドメーヌ・ジャイエ・ジルの2015年ヴィンテージのエチケットは従来のものから大きく変わっていますので、恐らく闘病中のジル・ジャイエ氏の病状を見越した上でのドメーヌ売却とエチケット変更だったのでないかと思われます。

 現在のドメーヌ正式名は『ドメーヌ・ホフマン・ジャイエ』で、新たなドメーヌの運営体制は、オーナーのホフマン氏の下で、ホフマンとジル・ジャイエが選んだ若きワインメーカーのアレクサンドル・ヴェルネとともに「ジャイエ・ジル」の歴史を繋いでいます。なお、日本の正規代理店のラックコーポレーション様は、2016年ヴィンテージを最後に取り扱いを中止しております。    

 ご冥福をお祈りいたします。

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