ローヌ渓谷最北に位置する”焙られた丘”を意味する太陽のワイン産地コート・ロティ

【ローヌ/コート・ロティ 〜 Rhone/Cote Rotie〜】

 スイス・アルプスに源を発し地中海に流れ込むローヌ川。この大河が通過する北のヴィエンヌから南のアヴィニョンまでのおよそ200キロが、ボルドーやブルゴーニュに並ぶ高級ワイン産地のローヌ渓谷です。

 ローヌのワイン産地はヌガーで有名なモンテリマールを境として、北部と南部とに大きく分類され、この北部ローヌの中の最北に位置するアペラシオンがローマ時代以前から存在し、長い間フランスの隠れた偉大なワイン産地であり、現在最も有名なローヌワインを生み出すコート・ロティです。

 コート・ロティ「Cote Rotie=焙られた(あぶられた)丘」の意味の通り、南東向きの急傾斜の畑は、夏には焙られるほどの暑さとなり、花崗岩質土壌の急斜面にしがみつくように植えられているシラーとヴィオニエ種の葡萄は一日中太陽にさらされ、果実は完熟します。下の写真は、ギガルの公式HP掲載の陽光を浴びる単一畑「ラ・テリュク」の畑ですが、正にコート・ロティの名前の通り、太陽のワイン産地です。

 しかし、意外なことに、この太陽のワイン産地コート・ロティのエレガンスとフィネスを感じさせるワインが、繊細なブルゴーニュワインに近い感じを持つ方々も多く、高名なワイン評論家リビングストン・リアマンス氏は、『コート・ロティは、ブルゴーニュとローヌの架け橋』と語っています。

 また、世界的なワイン評論家で「The World Atlas of Wine」の著者でもあるジャンシス・ロビンソン女史とヒュー・ジョンソン氏は、『コート・ロティのワインの、その魔法のような柔らかさと華やかさ、繊細な風味をしっかりとしたタンニンが支えるという点は、ブルゴーニュの偉大な赤ワインに近い』と評しているほどです。

 ブルゴーニュ愛好家の皆様方の中には、陽光に溢れた暖かい土地で育てられたシラー種の葡萄のワインが、緯度が高く冷涼な気候のピノ・ノワールから造られるブルゴーニュの偉大な赤ワインに近いとの専門家の評に、不思議な感じをお持ちの方もあると存じます。

 コート・ロティとブルゴーニュの近似性の一つは、近年のDNA解析により、ローヌワインの主要品種のシラーは、「モンドゥーズ・ブランシェ(Mondeuse Blanche)」と「デュレーザ(Dureza)」の自然交配で産まれたもので、デュレーザはピノ種の曽孫にあたる品種であることから、ピノ・ノワールと血縁的に近い上に、元々コート ロティで栽培されていたシラーはセリーヌと呼ばれており、南部ローヌで栽培されているシラーより淡い色調でピノ・ノワールに通じる繊細な味わいを持っていることが挙げられます。

 また、ローヌ地方は南北200kmと長く、実際には北部と南部では緯度が大きく違うため気候も異なります。コート・ロティは北部ローヌの最北端で、南部ローヌよりもブルゴーニュ南部のマコネやボジョレーと近い位置にあり、ミストラルと呼ばれる冷たい北風が吹き抜ける渓谷は、シラーが熟すのにはむしろ寒すぎる北限の地にあることも、ブルゴーニュと間違うほどのエレガンスさと複雑さをワインに与える一因となっているようです。(実際に、コート・ロティでも新しく平地に植えられた葡萄では完熟が望めないそうです。)

 下にローヌの葡萄産地地図を掲載しておりますので、コート・ロティの位置をご確認ください。

 

  このコート・ロティに君臨する北部ローヌの盟主が「イー・ギガル(E.GUIGAL)」です。ギガル社の創業は戦後間もない1946年のこと。その後、わずか半世紀にして北部ローヌ有数の生産者へと急激に大成長を遂げました。

 コート・ロティの土壌を代表する評価の高い区画、コート・ブリュンヌ(茶色の丘)とコート・ブロンド(金色の丘)は、コート・ロティの中心地アンピュイ村の北と南に分かれています。 歴史的にも有名なこの2つの丘の名前は、この地の領主・モジロン公爵に、ブロンド(金色)とプリュンヌ(茶色) の髪の2人の娘がおり、この2つの丘を、この娘達に分け与えたと言う逸話に由来しています。かつて、コート・ロティの多くの生産者は、白雲母と黒雲母が混ざった北のブリュンヌと南の白っぽい片麻岩のブロンドをブレンドしてワインを造ってきました。

 これに対し、ギガル社は、テロワール毎の単一畑のワイン造りとブランディング、新樽を活用する新しい手法を採用し、国際的に高い評価を受けたのです。

 中でも、「ギガルの三姉妹」(通称ラ・ラ・ラ)と言われる単一畑のコート・ロティ、「ラ・ムーリーヌ」「ラ・ランドンヌ」「ラ・テュルク」はギガルの名声を確固たらしめ、このアペラシオンにおいては他に並ぶもののない、圧倒的な地位を築いています。

 ローマ時代以前からの歴史を持つフランス最古のワイン産地の一つでありながら、栽培面積が小さく、しかも急斜面の人海戦術での栽培でコスト負担が割に合わず、またフィロキセラや第一次・第二次世界大戦等で荒廃していたコート・ロティを再発見し、一躍その名を全世界に広めたのが有名なワイン評論家のロバート・パーカー氏です。彼はギガル社を「この惑星で最も優れたワインメーカー」と称賛し、この「ギガルの三姉妹」に、過去30年間にパーカー100点満点を世界で最も多く付与し、多くのワイン愛好家が競ってこれを買い求め、1970年代から1980年代にかけて、ギガルとコート・ロティの名声が全世界に広がり、その後ルネ・ロスタン等個性的で秀逸な生産者も台頭し、今日の隆盛に至っています。

 一時消滅の淵際まで荒廃していたコート・ロティの復興に尽力したのがギガル社であり、とりわけ三つ子の三兄弟「ラ・ムーリーヌ」「ラ・ランドンヌ」「ラ・テュルク」の貢献度は極めて高かったと申せます。

 このギガルの三姉妹のコート・ロティはじつに40ヶ月もの長期間にわたって新樽に寝かされるため、オーク樽の善し悪しはきわめて重要となりますが、その品質を確実なものとするため、2003年以来、ギガルは1995年に入手したローヌ河畔の瀟洒な邸宅シャトー・ダンピュイに樽工房を設け、年間に必要となるおよそ800のオーク樽を自製しているのです。

 とかく単一畑のコート・ロティやコンドリュー、エルミタージュの上級キュヴェばかりに目が向きがちなギガルですが、メゾン共通のラベルで統一された、ネゴシアンもののアイテムもすこぶる質が高く、今日ローヌ全体におよそ60haもの自社畑を所有し、品質に妥協を許さないギガルは、コート・ロティを中心とする北部ローヌの盟主として、ますますの発展が期待されています。

*なお、2026年7月に2022年ヴィンテージから、従来のギガルの三姉妹に新たに4番目のキュヴェとなる「コート・ロティ ラ・レナルド」がリリースされ、「ギガルの四姉妹」となることが発表されました。この詳細につきましては、当ページ最下部に記載しておりますので、ご覧ください。
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【ギガルのコート・ロティ、三姉妹から四姉妹へ】

 北ローヌ地方の最北端に位置するAOCコート・ロティにおいて、コート・ロティとギガルの名声を確固たらしめ、このアペラシオンにおいては他に並ぶもののない、圧倒的な地位を築いているワインが、皆様が既にご承知の「ラ・ムーリーヌ」「ラ・ランドンヌ」「ラ・テュルク」の「ギガルの三姉妹(通称ラ・ラ・ラ)」です。

 この三姉妹に2022年ヴィンテージから新銘柄「ラ・レナルド」が加わり、コート・ロティ4姉妹(LALA'S)となることがギガル社から発表され、このほどギガル家3代目のフィリップ・ギガル氏と田崎真也氏をお迎えして特別披露会が銀座で行われましたが、その記事がワイン専門誌「WANDS(ウォンズ)」2026年7・8月号に掲載されました。ギガル社の日本の正規代理店であるラックコーポレーション様より、当該記事のご提供をいただきましたので、その内容を抜粋してお知らせいたします。(*掲載写真及び記事の出典は「ウォンズ」2026年7・8月号です。)

 これまでの三姉妹のワインを簡単にご紹介いたしますと、

 三姉妹の長女たる「ラ・ムーリーヌ」は、1966年が初ヴィンテージで、初代エティエンヌ氏が初めて購入した自社畑。コート・ブロンドの畑でこれまでの三姉妹の中で、最もエレガントなスタイルです。

 次女にあたるラ・ランドンヌは、3代目フィリップス氏の誕生を祝し1975年に畑を購入、1978年が初ヴィンテージで、シラー100%で最も力強いスタイルです。

 末娘の「ラ・テュルク」は、2代目マルセル氏が1980年に畑を購入、1985年が初ヴィンテージで、コート・ブリュンヌに位置していますが、コート・ブロンドのようなエレガンスも併せもつスタイルです。

 これらは、どの畑も女性名詞の定冠詞「La」が付くことから通称「ギガルのラ・ラ・ラ」と呼ばれています。そして、今回これに新たに四番目のワイン「ラ・レナルド」が加わり、ギガルの四姉妹となり、この四つのキュヴェの総称は新たに「LALA'S(ララス)」と命名されました。

 この新たな単一畑「ラ・レナルド」は、ギガル家の4代目となる双子の兄弟シャルル&エティエンヌの誕生を祝い、2010年に取得したものです。畑はコート・ブリュンヌにある1.5haで、コート・ブリュンヌとコート・ブロンドの境を流れる小川ル・レナルド(Le Reynard)のすぐそばに位置しています。これまでの3つの単一畑が全て女性名詞であったことから、「Reynard」の末尾に「e」を付けて女性形にして、この畑を「ラ・レナルド(La Reynarde)」と命名したそうです。セパージュはシラー100%で、生産本数は約8000本です。

 下に、ギガル社ご提供の写真と四姉妹の畑の位置を示すイラストを掲示しておりますので、各畑の位置をご確認ください。

 特別披露会でこのラ・レナルドを試飲された田崎真也氏は次のようにコメントされています。

 『香りは華やかで芳醇な印象。ブルーベリーやブラックベリー、カシスの熟した果実香にスミレの花のエッセンス、甘草や黒コショウのスパイス香などが調和している。味わいは豊かでふくよかな果実味が広がり、しっかりとしたタンニンのストラクチャーを感じ、余韻は長く持続する。同じシラーの100%のラ・ランドンヌに比べても若干よりエレガントな印象を残す。まだ樹齢は10年と若いが、ラ・テュルクもラ・ランドンヌも若木の頃から販売しており、子供の成長とともに葡萄も成長し、次第に複雑性をましていく。』

 

 また、披露会後、フィリップ・ギガル氏は新キュヴェ「ラ・レナルド」について、次のようにコメントされています。

 『断定できるわけではないが、私の印象では、若木は古木に比べてより果実味が強く、スパイス感は控えめな傾向にあると思っている。ラ・レナルドはとてもアロマティックで力強い。この力強さは、土壌に含まれる鉄やマンガンの酸化物の存在が、ワインのアントシアニンやタンニンといったポリフェノールをより強めているためと考えている。一方で、フレッシュさは、全房醗酵によってもたらされる上品で空気感のある植物的なニュアンスによるものだ。もし、同じヴィンテージを並べて試飲するなら、「ラ・ムーリーヌ」、「ラ・テュルク」、「ラ・レナルド」、「ラ・ランドンヌ」の順番をお薦めする。』

 新キュヴェ「ラ・レナルド」は、若くして既にサラブレッドのような血統の良さと骨格の強さなど、美しいポテンシャルをみせています。この将来性豊かな4番目の末娘の誕生で、3姉妹も刺激を受け、より輝きを増していくことでしょう。今後のギガルのコート・ロティの四姉妹から目が離せません。

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