一級から特級へ格上げされた数少ない畑クロ・デ・ランブレイを

 僅か0.043ha所有する等、超レア畑保有で有名なドメーヌ

 【ドメーヌ・トプノー・メルム】

  〜Domaine Taupenot-Merme〜


 「ブルゴーニュの特級畑クロ・デ・ランブレイはドメーヌ・デ・ランブレイのモノポールか否か」という設問が、ワイン検定試験の問題として取り上げられることが多々あります。あるいは、ワイン会等で「特級畑クロ・デ・ランブレイのもう一人の所有者は?」等と話題になることもあります。その話題となるドメーヌこそが、特級畑クロ・デ・ランブレイを僅か0.043ha(約129坪)所有するドメーヌ・トプノー・メルムなのです。

 ドメーヌ・トプノ・メルムは、サン・ロマン村のドメーヌ・トプノ(父方)のジャン・トプノとモレ・サン・ドニのドメーヌ・メルム(母方)のドゥニーズ・メルムの婚姻により、18世紀設立でモレ・サン・ドニで7代続く老舗のドメーヌ・メルムを引き継ぐ形で1963年に誕生したドメーヌです。

 母のドゥニーズ・メルムがアンリ・ペロ・ミノ夫人のマリー・フランスと姉妹だったことから、ドメーヌ・メルムが所有していた樹齢35〜60年を超える複数の超レア区画をドメーヌ・ペロ・ミノと分割相続しました。

 下に掲載したドメーヌ・トプノー・メルムの所有畑が道の向こう側にあるドメーヌ・ペロミノの所有畑のラインナップと似ているのはそういう理由からで、二つのドメーヌは言わば兄弟ドメーヌのような関係にあります。

 現在ドメーヌは、兄ロマン・トプノと妹ヴィルジニーの二人が中心となりドメーヌを運営していますが、ドメーヌ・ペロ・ミノの当主クリストフ・ペロ・ミノとは従兄妹同士(母親同士が姉妹)の間柄で、分割相続のため多くの畑で隣り合っていることもあり、実際に葡萄畑ではクリストフ・ペロ・ミノと協同栽培を行っています。

 さて、話題の特級畑クロ・デ・ランブレイについてです。

 クロ・デ・ランブレイは、1365年には既に「Cloux des Lambrey」の名前でシトー修道院の書類に登場している由緒あるクリマで、1981年4月27日に一級から特級に昇格し、不遇の時代から復活し、ブルゴーニュの歴史を変えたグラン・クリュとして知られます。

 このクロ・デ・ランブレイの畑面積は8.84haで、その内8.8haは畑の名称をそのままドメーヌ名とした「ドメーヌ・デ・ランブレイ」が所有しており、実質的なモノポール状態にあります。

 一つの畑が多数の生産者に細分化されているブルゴーニュにおいては、ロマネ・コンティやラ・ターシュにみられるように「モノポール」は生産者にとって絶大な商品価値がありますが、ドメーヌ・トプノー・メルムがこの畑を僅か0.043ha所有しているため、ドメーヌ・デ・ランブレイの「占有比率は昔の面積単位ウーヴレで203:1で、実に99.5%」ですがモノポールを名乗ることができず、「ドメーヌ・デ・ランブレイにとって、目の上のたんこぶ(a thorn in the side of Domaine de Lambrays=喉に刺さった棘)」になっているのです。

 モノポールを妨げている畑の下部にあるドメーヌ・トプノー・メルムの0.043haの畑は、元々は野菜畑であったそうですが、1974年に葡萄樹が植えられ、そこから毎年1樽に満たない約200本のクロ・デ・ランブレイが造られていますが、とても商業ベースでまともに売り出す量ではない「ブルゴーニュ屈指の超稀少ワイン」となっています。

 どうしてもクロ・デ・ランブレイが最初に話題になるドメーヌ・トプノー・メルムですが、1998年に兄のロマン・トプノーがドメーヌ運営に参加してから急速に評価が高まり、しかも上の所有畑一覧表の通り、樹齢35〜60年を超える超レア区画の畑を多く有し、2001年からビオロジックでの葡萄栽培を行っており、今や「モレ・サン・ドニのカリスマ」として注目される優良ドメーヌとなっています。

 ドメーヌ・デ・ランブレイ側はこの25年間、トプノー・メルム所有の0.043haの買い取り交渉をしているようですが、拒否されているのは、このためでしょう。しかし、2014年からドメーヌ・デ・ランブレイのオーナーは資金力のあるLVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)ですから、ひょっとしたら何年か後に破格の買収金額で「モノポール」ということもあるかもしれません。

 ドメーヌ・デ・ランブレイの造る特級クロ・デ・ランブレイは年間約35,000本生産されるワインですが、トプノー・メルムのクロ・デ・ランブレイの方は僅か200本の超レア・ワインで市場に出回ることはないため、ドメーヌの実質的な看板ワインは0.57ha所有のシャルム・シャンベルタンと0.85haのマゾワイエール・シャンベルタンです。しかもペロ・ミノと同様にこの二つのクリマを別々に仕立てる珍しい蔵であり、このことからも畑の個性を大事にする姿勢が現れています。

 また、北と東を特級畑ミュジニーに、南を特級畑エシェゾーに囲まれたシャンボール・ミュジニー一級畑ラ・コンブ・ドルヴォーにも0.45haの畑を所有していますが、ここに所有する区画はペロ・ミノの区画と隣りあわせで、ジャック・プリウールの特級ミュジニーの区画に地続きで隣接し、北隣にあるミュジニーとも同じ高さにあり、ここが特級でないのが不思議なほど、卓越した立地に恵まれており、ここからドメーヌで一番高い樹齢70年以上という古樹の葡萄で造る「このクリマを代表する最上のコンブ・ドルヴォー」と評価されています。

 これ以外にも別格の特級畑シャンベルタン・クロ・ド・ベーズの真上に隣接する稀少な一級畑ベレールにも0.43haの区画を所有しており、ドメーヌ・トプノー・メルムはブルゴーニュ愛飲家垂涎の超レアワインの造り手として注目すべきドメーヌです。

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