2008年にドメーヌ名をアルヌー・ラショーに改称し更に飛躍

 ロマネ・サン・ヴィヴァンとレ・スショの二枚看板を持つ名門ドメーヌ

 【ドメーヌ・アルヌー・ラショー】

 (旧ドメーヌ・ロベール・アルヌー)

〜Domaine Arnoux-Lachaux (Robert Arnoux)〜


 ドメーヌ・ロベール・アルヌーは、1858年創設のヴォーヌ・ロマネの名門ドメーヌです。ドメーヌに名を残す先代のロベール氏は1957年に当主になり、一気にドメーヌの名声を高め、その規模を拡大した偉大な人物で、ブルゴーニュのグラン・ヴァン・テイスティング(ブラインド試飲)では、しばしばDRC等のトップ・ドメーヌと肩を並べる評価を受け、著名なワイン評論家ロバート・パーカー氏から「プティDRC](小さなDRC)と称賛されました。

 2008年にドメーヌ・ロベール・アルヌーは名称がドメーヌ・アルノー・ラショーとなり、エチケットのデザインも一新されていますが、これには次の様な経緯があります。

 ロベール氏には3人の娘がいましたが、跡取りとなる男子がいなかったことから、末娘のフローランスが婿をとり、ドメーヌを継ぐことになります。その婿婿が五代目となる現当主のパスカル・ラショーです。

 パスカル・ラショーは元々ワイン造りの家系ではなく、薬剤師として働いていた頃にロベール・アルヌーの娘フローランスと知り合い、結婚します。

 結婚後、義父の下で葡萄栽培とワイン造りを学び、ドメーヌに参画します。そして1990年から醸造責任者につき、1995年頃にドメーヌを引き継ぎます。1995年にロベールが他界して以降はパスカルとフローランスのふたりでドメーヌを切り盛りし、カーヴの拡張、醸造施設の改装、そして畑もさらに増やしていきます。婿入り前、薬剤師として磨いた論理性と知性を備えるパスカル氏が造るワインの評価は、先代を凌ぐほどに高まりました。

 日本においても下の写真の通り、美術出版社発行のワイナート41号(2007年11月発刊)「ヴォーヌ・ロマネ完全読本」の中でドメーヌ・ロベール・アルヌーとその看板ワイン「ロマネ・サン・ヴィヴァン」が大きく紹介されています。

 1984年にドメーヌ・ロベール・アルヌーがモワラール家から取得したロマネ・サン・ヴィヴァンの区画はロマネ・コンティの下で、かつてモワラール家が所有していたクリマ南端の「ヴィーニュ・ア・ジョアン・ロワ・ド・ルーヴル(Vigne a Jehan Roy de Rouvres)」の区画の中の一番南にある0.35ha区画です。アルヌーは1920年代からこの区画でロマネ・サン・ヴィヴァンを造っていましたが、1984年まではモワラール家の所有でした。

 参考までに、このモワラール家が所有していた区画は、現在3つのドメーヌによって分割所有されており、一番南はロベール・アルヌー・ラショーの0.35ha区画。残りの2つの区画は1984年にシルヴァン・カティアール、2005年にデュジャックがモワラール家から取得したもので、2つとも0.17haの極小区画です。

 先代を超えたという自信の表れでしょうか、2008年に、これまでのドメーヌ・ロベール・アルヌーの名称を自分の名前を入れて、ドメーヌ・アルヌー・ラショーへと改称し、パスカル・ラショーの名前でネゴシアン事業も始めており、今日ではヴォーヌ・ロマネの著名生産者の一人として活躍しています。

 ヴォーヌ・ロマネが本拠地だけに、下の所有畑一覧表の通り、ヴォーヌ・ロマネとニュイ・サン・ジョルジュを中心に素晴らしい数々のクリマを所有し、畑の総面積は13ヘクタールを超えています。

 特級畑はロマネ・サン・ヴィヴァン、エシェゾー、クロ・ド・ヴージョの三大特級畑に加えてラトリシエール・シャンベルタンとじつに豪華ですが、実は所有畑の中でトップ・キュベのロマネ・サン・ヴィヴァンと共に最も注目され、人気を集めているのが、看板ワインのヴォーヌ・ロマネ一級レ・スショです。

 一級畑レ・スショは、「造り手によっては、特級扱いにされる一級畑の代表格」ですが、窪地で水捌けの悪い区画が多いため、所有畑の位置によってワインの出来に大きな差が出ます。しかし、アルヌー家が所有する0.43haの区画は、「特級リシュブール、ロマネ・サン・ヴィヴァン、エシェゾーに囲まれた、水捌けの良い絶好の斜面上部に位置するレ・グラン・スショ(Les Grands Suchots)と呼ばれる区画」に位置し、同ドメーヌを「プティDRC」と言わしめた特級のポテンシャルを持つ最上のキュヴェなのです。

 これに加えて、レ・スショでもう一つ説明が必要なのが、葡萄の種類と樹齢です。

現在、ブルゴーニュ地方で多く栽培されているピノ・ノワール種のクローンの元となった株は安定した収量が見込め、病害虫にも耐性があるなど、栽培のしやすさから選ばれたピノ・ドロワです。

 このピノ・ドロワとは別にピノ・ノワール種の原型に近いより伝統的なピノ・ファンという株がありますが、栽培も難しく、収量も少ないことから今日では非常に少なくなってしまっています。しかし、このピノ・ファンこそ果粒が小さく、濃縮果汁に秀逸性がある亜種で、あのロマネ・コンティも実はこのピノ・ファンから造られているのです。

 ブルゴーニュワインの神様故アンリ・ジャイエ氏がミルランダージュ(結実不良)によって生じた小さな果粒の葡萄を愛したことは有名ですが、貴腐ワインといいアイスワインといい、食用では不適と思われるものがワインの世界では絶品の材料になるのですから不思議なことで、まさに「神の悪戯」だと思います。

 話は逸れましたが、ドメーヌではこの樹齢60年から100年に達する超ヴィエーユ・ヴィーニュのピノ・ファンが植わる区画をレ・スショに所有しており、ピノ・ファンという株とその樹齢に加え、ロマネ・サン・ヴィヴァンとグラン・エシェゾーの間という好立地も手伝ってグラン・クリュ並みの逸品に仕上がり、しかも生産本数も稀少であることからレ・スショは人気稀少ワインとなっています。

 実際に、このレ・スショはドメーヌのセラーでの試飲の際、クロ・ド・ヴージョとエシェゾーの後、ロマネ・サン・ヴィヴァンの前に供されるとのことですので、その実力のほどがわかります。

 また、一級畑オー・レニョはコント・リジェ・ベレールのモノポール特級畑ラ・ロマネの上に接する面積1.62haの小さな畑で、ラ・ロマネを間に挟んでロマネ・コンティからは直線距離で約50メートルほどの上の斜面にあります。しかもロベール・アルヌーの所有する区画は、ラ・ロマネに接し、リシュブールのDRC区画の直ぐそばという好立地の僅か0.2haの極小区画です。加えて、オー・レニョの区画では、ユベール・ラミーで有名なオート・デンシテ(高密植栽培)を開始しており、2018年ヴィンテージのオー・レニョはドメーヌのラインナップで最も高額な稀少キュヴェとなっています。

 ドメーヌでの通常の新樽比率は村名で20〜25%、一級畑で30〜50%、特級は100%ですが、稀少ワインであるレ・スショとオー・レニュにも100%の新樽を用いています。

 ロベール・アルヌーそして世代交代したアルヌー・ラショーのワインは、なんといってもバランスがよいことが挙げられ、果実味が過ぎたり、樽香が強すぎることもなく、しかも十分な凝縮感を伴っています。

 2011年からは長男のシャルル・ラショーがドメーヌに加わり、2012年ヴィンテージからは醸造をこの当時25歳の息子に担当させ、全房発酵などの改革に取り組みました。そしてこの結果に満足したのでしょう、2013年にパスカル・ラショーは引退し、新たにシャルル・ラショーが六代目当主となって、種々の改革を推進しており、世代交代に成功し、ますますの発展が期待されているドメーヌ・アルヌー・ラショーです。

【エチケット変更のお知らせ】

 最新の2018年ヴィンテージから、ドメーヌ・アルヌ・ラショーの各ボトルに貼られるエチケット(ラベル)が下の写真の通り、大きく変わりました。

 2017年ヴィンテージまでのものは、父の前当主パスカル・ラショー氏がドメーヌ名をロベール・アルヌーからアルヌー・ラショーへと代えた2008年に作り変えたものでしたが、2018年に新たなデザインとなりました。

 この理由について、シャルル氏は「モダンでありながら、トラディショナルなデザインに変更した」と語っていますが、これは今やブルゴーニュの未来を担う注目すべき造り手としてフランス国内外の注目を集める存在となったシャルル・ラショー氏の六代目当主としての覚悟と自信の表れと言えるのかもしれません。

 この新エチケット登場に伴い、次の通り、幾つかの変更があります。

1.ロマネ・サン・ヴィヴァンと並ぶ看板ワインの一つ、ヴォーヌ・ロマネ一級レ・スショは、昔使っていた名称の「レ・グラン・スショ(Les Grands Suchots)」と表記しています。

2.面積が広い特級畑エシェゾーとクロ・ド・ヴージョでは、小区画名を追加記載しており、下の新旧エチケット比較写真の通り、エシェゾーの後には、「レ・ルージュ(Les Rouges)」が、また、クロ・ド・ヴージョの後には「カルティエ・ド・マレ・オー(Quartier de Marei Haut)」が、それぞれ表記され、どこの区画の葡萄を使用しているのかわかりやすくしています。

3.エチケット下段に「Recolte 2018」と表記し、収穫年を明記しています。

 

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【ロニャージュとトリコタージュ】

 1858年創設のヴォーヌ・ロマネの名門、ドメーヌ・アルヌー・ラショーを率いるのは、2011年にドメーヌに加わり、2013年から六代目の新当主となったシャルル・ラショー氏です。

 シャルル・ラショー氏は、ブルゴーニュの女神とも称されるルロワ女史に感化され、低収量、全房発酵、ビオディナミ農法の導入、畑作業の厳格化等の様々な改革により大きく進化し、今や専門家からは「プティ・ルロワ」と称賛されるほどドメーヌの名声を高め、ブルゴーニュにおける新世代の造り手の先頭を走る一人として高く評価されています。

  シャルル・ラショー氏がマダム・ルロワの影響を大きく受けた一つが、「キャノピー管理=Canopy Management」です。「キャノピー」とは、「葉、茎、花などの葡萄樹の地上にある部分」のことで、これを適切に管理するのがキャノピー管理ですが、この中の作業に、「ロニャージュ(rognage)やトリコタージュ(tricotage)」があります。

 夏の生育期には、放置すると葡萄の枝は伸び放題となり、風通しが悪くなったり、果実に養分が行きわたらないため、通常は、新梢の先端を切る「ロニャージュ(摘芯)」を行います。しかし、現在では、この枝の先端こそが葡萄の成長に必要なエネルギーを生み出す器官が集中しており、光合成を活性化し、顆粒の糖質を造る源であるとの考えから、「枝の先端を切るのではなく(ロニャージュをせずに)、編んでいる」生産者も増えています。

 これがフランス語で「編む」という意味の「トリコタージュ」で、ブルゴーニュで現在これを実践している最も有名な造り手が、ドメーヌ・ルロワとドメーヌ・ビゾです。

 トリコタージュは大変な労力と時間を要する作業ですが、シャルル・ラショー氏は、マダム・ルロワとの親交を深める中で、より良いワイン造りのために、上の写真の様に、トリコタージュの手法を取り入れています。現在人気のアルヌー・ラショーの素晴らしいワインは、このような地道な畑仕事から生まれているのです。

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