白ワイン中心のコート・ド・ボーヌにおいて赤ワインの教科書的存在のアペラシオン

ブルゴーニュ大公家ゆかりの村【ヴォルネイ 〜Volnay〜】

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 ヴォルネイの集落は、11世紀の初め、既にこの地に畑を所有していたカペー朝ブルゴーニュ伯爵家のシャトー周辺に築かれたのが始まりで、コート・ドールの中で歴史的意義が最も大きい村です。

 

 そして、ブルゴーニュ公のユーグ4世とその息子のロベール2世の統治下にあった1250年から1305年までの間におびただしい数の葡萄畑が開墾されました。ヴォルネイに「クロ」の名がつく単独所有畑が多いのはこの理由によります。

 

 この時代、ヴォルネイのワインの名声は高く、1300年代はブルーゴーニュで最も高名なワインでした。1328年にブルゴーニュ公フィリップ・ド・ヴァロワは自身の戴冠式でヴォルネイのカイユレを飲んだと言われています。その後、ルイ十一世もヴォルネイを気に入り、1447年の全収穫を自分の蔵に独り占めしたという記録もあるようです。

 

 このように中世からの歴史と名声を勝ち得てきたヴォルネイが現在やや不当な扱いをうけているとすれば、特級畑を持たないことでしょう。「ブルゴーニュワインがわかる」の著者マット・クレイマー氏はその理由として二つ挙げています。一番目は政治説で、呼称統制の審議が行われた1930年後半にヴォルネイの売り込みや根回しが不十分であったこと。二番目は、全体の葡萄畑の水準が高いせいで、特級に格付けするほど他の畑から突出した個性を持つ畑がなかったからとも言われます。

 

 昔から「ブルゴーニュのことを全く知らず、造り手も作柄も葡萄畑も見当がつかなければ、コート・ドールのどの村よりもヴォルネイの一級ワインを買え」と言われるほどですから、二番目の説もあながち間違いではないかもしれません。

 下にヴォルネイの葡萄畑の概略地図を掲載していますが、これはブルゴーニュ・ラヴァーのバイブルである「ブルゴーニュワイン大全」等の関係資料に基づき、当店店長がエクセルで描画したオリジナル地図ですので、縮尺(畑の広さ)は正確ではありませんが、畑の位置関係はよく分かるとおもいますので参考にして下さい。

 ヴォルネイの栽培区域は210haほどで、コート・ドールの中では最も小さな部類に入りますが、コート・ドールにある32の村の中に、村名格の畑よりも広い一級もしくは特級の畑を持つ村が7つあり、ヴォルネイはこの数少ない村の一つであり、村としての水準が非常に高いことがまず特徴の一つとして挙げられます。

 特徴の二つ目は畑の標高差が大きいことで、標高225m〜375mにわたって広がる葡萄畑の内、最良の一級畑は標高240m〜300m付近に位置しており、全体的に南東向きの水はけの良い急斜面となっています。

 

 三つ目の特徴は、白ワイン中心のコート・ド・ボーヌの中で、葡萄の栽培品種はピノ・ノワールのみで、白ワインの生産をしていないことです。中世よりヴォルネイの赤ワインに対する評価は非常に高く、歴史上の人物ではルイ11世やルイ14世、そして歴代のブルゴーニュ公が愛したワインとして知られています。 そのティスティング・コメントとしては、デリケート、繊細、エレガントなど、まるでシャンボール・ミュジニーのような言葉が並びます。しっかりした骨格とかタンニンの豊かさといったパワー面より余韻の長さに特徴がある赤ワインと言えます。

 

 ここヴォルネイで最も名高いドメーヌ・マルキ・ダンジルヴィーユは、ヴォルネイは勿論、ブルゴーニュの最高峰生産者として有名ですが、このドメーヌが一族のメニル男爵の手に渡ったのが1804年なので、200年を超える歴史を持つブルゴーニュきっての老舗ドメーヌです。

 

 ドメーヌにその名を残す創設者ダンジルヴィーユ侯爵(メニル男爵の曽孫)がこの由緒あるドメーヌを引き継いだのは1906年のことですが、1920年代の後半から1930年代の前半にかけて、ドメーヌ元詰めやアペラシオン制度推進の中心人物であり、またINAO(フランス原産地呼称統制協会)の創立メンバーだったりとフランスのワインに関する機関で活躍した名実ともにブルゴーニュの名士です。

 上述したようにドメーヌ創立後約200年ですが、1507年から歴史に名が残る老舗名門ドメーヌです。ヴォルネイに特級畑がないのは、上述の二つの理由に加え、ダンジルヴィーユ侯爵がアペラシオン制度推進の中心人物であったため、身贔屓あるいは利権誘導を避けたためとも言われているほどです。

 ドメーヌ・マルキ・ダンジルヴィーユのフラッグ・シップ・ワインは「大公のクロ」と呼ばれ、ブルゴーニュ大公ゆかりの歴史ある銘醸畑「クロ・デ・デュック」ですが、ドメーヌ創設者ダンジルヴィーユ侯爵は、この畑をモノポール(単独所有畑)で所有しているだけに特級を主張するのを遠慮したのでしょうか。その真偽はともかく、コート・ドールの醸造家達から信頼される高潔な人格者であったことは間違いありません。現当主は、ダンジルヴィーユ侯爵の孫にあたるギョーム・ダンジルヴィーユ氏です。

 このマルキ・ダンジルヴィーユとともにヴォルネイで最高のトリオをなす造り手が、ドメーヌ・ド・ラ・プス・ドールとドメーヌ・ミシェル・コラン・ラファルジェです。いずれも自慢の単独所有畑を所有しており、プス・ドールには、ドメーヌの名の由来となった「クロ・ド・ラ・ブス・ドール」と「カイユレ・クロ・デ・ソワサン・トゥーヴレ」のいずれも甲乙つけがたい銘醸畑、ラファルジェには「クロ・デュ・シャトー・デ・デュック」があります。

 これら三人のヴォルネイ最高の造り手達のそれぞれのモノポールやフラッグシップ・ワインを飲み比べてみることは、ブルゴーニュワイン愛好家にとって憧れであり、もしそれができれば無上の喜びではないでしょうか。

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